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春風みたいな読後感「桃花源奇譚」井上祐美子 

晋の太元中、武陵の人、魚を捕るを業となす……
ではじまる中国の伝説を御存知の方も多いかと。
桃花源、不老不死さらには不病の人々が暮らす夢のような里の話です。その伝説と北宋
の皇位継承を絡めた中華ファンタジー。

「桃花源奇譚」全四巻。
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貴族の子弟白戴星と科挙試験にわざと落第した秀才、希仁は旅芸人の美少女、宝春を助けようとして出会います。
旅芸人である彼女が狙われるのは、「桃源郷」の末裔だからだというのだが……。

やんちゃな戴星少年にふりまわされる周囲が微笑ましいことこの上なく。北宋時代の描写が実に分かりやすいので、中国史に詳しくない人間でもすんなりと入って行けました。キャラがいい味を出していて文章にも疾走感があり、一気によめます。
ファンタジー要素もありますが、冒険活劇な部分多し。

下敷きは中国の伝記「三侠五義」
王の后が、別の寵姫が生んだ王子を猫にすりかえ、化け物を生んだとの濡れ衣を着せて失脚させたというお話。
王子=戴星です。

戴星は辛くも難を逃れ、叔父のもとで皇帝の甥として育ちます。彼は行方不明の実母との再会を願い、その手がかりである桃源郷の住人を探すために都を出立します。
強気な宝春と弁の立つ希仁とそして戴星のトリオ漫才?が旅を華やかに。また、戴星を殺すはずが、何故か戴星のペースに巻き込まれて道連れになってしまった侠客、殷玉堂がいい味出してます。
黙っていれば、目元の涼しげな美男、しかし顎の細さが酷薄な気質をあらわしている男、殷玉堂。
平気で人も殺すかと思えば無償で人助けもする、そんないっちょまえの侠客がやんちゃ公子に振り回され、時には「俺はどうせ悪も善も中途半端にしかやれないもんねー」と拗ねていたり、希仁を当てにして、玉堂には気を許さない(←元々戴星を殺そうと付けねらっていたくせに)戴星に心中ムカついてたり
「惚れたって言えよ…(∀) 」…とニヤニヤしつつ読んでいたのですが……彼が作中、心身ともに一番苦労をしていて気の毒でしたw。裏主人公。
やけに作者さんの贔屓を感じる…と思っていたら、最後の戴星からの「贈り物」で「三侠~」を知っていた人にはその理由が分かります…。古典に詳しい人はにやりとする筈。

私はうっかり玉堂兄さんにはまっちゃったので彼の名が気になって検索をかけてラストの意味がよーやく分かったのですが…うーん、無知って損だ。おかげで今から三侠五義やら十三妹やら、中国映画やら京劇やらをあさる羽目になりそうです。

何が善で何が悪だったのか、桃源郷を巡るあらそいも、疑問を残したまま終わっているのがかえって伝説の不思議さを引き立てていていいですね。
読後感がとても爽やかな物語でした。
影薄いなあと思っていたヒロイン、宝春の最後の選択が、これまた爽やかでいいのです。拍手喝采。

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