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永遠、その後「ブロークバック・マウンテン」アン・リー監督 

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ブロークバックマウンテン。登るのが困難な山、という意味を持つこの山に羊番としてひと夏を過ごすこととなった白人貧困層に属するふたりの若者、イニスとジャック。
二人きりとなった若者達はやがて心を通わせ、愛し合うように。
現実の辛さをすべて忘れさせる美しい山々の頂の中、夢のような毎日を過ごす若者たち。……しかしその背徳の生活が雇い主のアギーレの知れるところとなり、二人は早々に山をおろされる羽目に。
ジャックもイニスも家庭を持ち、自分の人生を過ごすのですが、どうしてもお互いを忘れることが出来ずに再び互いを求めるようになります。
二十年にも渡る、秘めた愛の物語。
美青年同士のビジュアルが美しいわーと、ちょっと邪な思いを抱いて観にいったのですが、この映画は…

重い!

愛情の物語、ととることもできるし、ジェンダーの問題として受け止めることもできる。私は「人生をどう生きるべきか」について一晩中悩んだ。二人の主人公のうち、イニスの心情に、どっぷりと浸かってしまいました。



久々に意図せずに泣きました。

何かを守ろうとして耐えていく事って一番大切なものを喪うことと等しいんだね。やや過激な同性同士の性描写に抵抗のない方は是非スクリーンで観ていただきたい。山々が壮大で美しい!


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ネタバレを激しく含みます。

西部の古いしきたりや考えから抜け出せないイニス。
普通の枠から抜け出す勇気を持てない彼にとってジャックの再三の申し出「一緒に暮らそう、二人で逃げよう、牧場をやろう」はただの夢物語に聞こえ、それを受けることは自身の社会的抹殺を意味します。九歳のころ、なんの罪もないゲイの殺害を目の当たりにした彼にとって、同性愛とは死に直結する大罪だったからです。
二十年間、隠れながら僅かな間しか逢瀬を交わせない二人。
ジャックはイニスに苛立ちを募らせ、近くの人間に癒しを求め浮気してしまうのですが、それを責めるイニスはひどいと思いました…しかしイニスの心情もかなり理解出来ます。
異端であることは、誰にとっても辛い。
異端を補う財力や能力がある人間であればともかく、無能で貧しい、日々をただ生きるだけの人間にとっては、普通であることが社会に即することができる唯一の鎖なのではないか。イニスは月約三万円の養育費を払うことさえ難しい、白人の貧困層に属す人間です。さらに言えばキリスト教の封建的な勢力が根強い西部(ブッシュの支持基盤も西部ですね)と言う土地柄ではホモフォビア(ゲイを毛嫌いする人)がなお多く、貧困の不満がゲイの人々へむけられることも多いようで。
彼がそのつながり、言うなれば社会における自分の存在意義を守るためには人生でみつけた一番大切なもの=ジャックという愛する人、と自分の本質=ゲイである、という性癖を隠し続ける必要がある、ということが何よりも悲劇だと思いました。


そして訪れる唐突な別れ。
ジャックは農業用機械の誤作動で死亡してしまいます。しかし、それをジャックの妻ラリーンから告げられたイニスは直感します(ジャックは殺されたんだ!…九歳の頃、用水路でリンチされ無残に殺されたゲイのように)と。
ジャックの妻に「彼はブロークバックマウンテンが最も好きなところだった」と言われ、彼の遺灰(普通キリスト教は復活の日の為に土葬だから、イニスが火葬を望んだのは自分が宗教的タブーを犯したことについて彼なりに罪の意識を感じていたからかも?)を山にまくことを決意するイニス。
遺灰を引き取るために、はじめて訪れたジャックの家で、彼はジャックが大切にしまっていた二人の思い出を見つけるのです……。
何度思い返しても切ないですね。

「息子はあんたと牧場を一緒にやるんだと言っていた」ジャックの父親にそう告げられても時はすでに遅し。ジャックはもう、この世にいない。もっとはやく、イニスが、その大切さに気づいていたなら、ジャックのために勇気を出せたなら…己の、自身に対する偏見を乗り越えられたなら…何度も何度もそのチャンスはあったはずなのに。ジャックはずっとイニスの決断を待っていたのに。
……すべてIFの世界。

これからもイニスは自分の本質に怯え、世界の片隅で生きていくのでしょう。愛する人との思い出をそっとクローゼットにしまいながら。永遠を手に入れてそれを喪ったものほど不幸で、そして幸せな人間はいないのかもしれませんね。結末をハッピーエンドとみるか、不幸と観るかは観客によって真逆でしょう。

ラストシーン、未来へと希望を膨らませる娘と対照的なイニスの姿が、本当に哀愁でした。自分が四十になったとき、この映画をどんな気持ちで観返すのだろうと思って感慨深く。大切なものを選び取れる賢明さを持ちたいな。

胸に迫る映画でした。

 追記
同性愛についてもこの映画の一つのテーマですが、prism viewpointさんのブログを読ませていただいて大変面白かったのでTBさせていただきました。
同性愛ってなんだろう、とまた悩んだり。私はそういう側面よりも、人生を喪って取り返しがつかなくなってしまったイニスの悲哀にショックを受け、また自分が人生においてそうなったらどうしよう、大切なものを得ないまま年を経ていくのか…と考えたら居ても立ってもいられなくなると言う(苦笑)せせこましい恐怖感を強く抱いてしまったのでそっちのほうをメインに書いてしまいました。
同性愛について、というよりも愛について考えたい方は是非。おススメのレビューです。
けれど、ああ、色んな見方のできる映画だなあと更に感心…。うー、もっかい観にいきたい!

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Comments

TB&リンクありがとうございます。

丁寧に紹介してくださって、ありがとうございます。
自分の見方が正しいと主張する事はありえませんが、一つの見方と思って楽しんで頂けたら幸いです。
確かに、色々な見方ができるから、あとを引く映画ですよね(微笑)
更新は激遅なので(苦笑)また気が向いた時にでも覗きに来て下さい。

ありがとうございます

コメントありがとうございました。
ジャックが恋に落ちる過程を丁寧に書いてくださって、ああ、そういうことかあ~と目から鱗でした。
色々な方の意見を拝見できるのがブログの楽しいところですね。
また遊びに伺います!

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ブロークバックマウンテンの女優

昨日書ききれなかったので。見終わった後よりも、時間が経つにつれじわじわきますねこの映画は。ジャックのお母さんについて。ジャックの両親は痩せた土地で細々と牧場経営をしていますが、決して裕福ではありません。ジャックと父親は仲が悪いのですが、お母さんは子供部屋

「ブロークバック・マウンテン」

 オリジナル・サウンドトラック~ブロークバック・マウンテン「ブロークバック・マウンテン」 ★★★☆BROKEBACK MOUNTAIN (2005年アメリカ)監督:アン・リー脚本:ラリー・マクマ

自分を解放できる愛に縛られた2人●ブロークバック・マウンテン

作品としては、『真夜中のカウボーイ』に似ていても、扱っているテーマは、『あらしのよるに』や、『フィラデルフィア』に近い、珠玉の作品。↑のポスターで、白いテンガロンハ
  • [2006/04/10 18:39]
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